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言葉使い

第8話 自分の声で

第8話 自分の声で

目覚まし時計が鳴る。7:12。

テレビが先に来た。

「——本日も7時12分、湾岸おはようニュース。首題は、Semantic Mesh試験区域——市民の発話意図解析が、92パーセント精度に達したと発表——」

十回目の朝だ。九巡目の終わり、アイビーが自動送信したメールに相棒の口癖が混ざり、クライアントから再協議が来た。

僕は、最初に設定を変えた。

「アイビー。手動承認、必須。自動送信、全部オフ。——今日、僕の声、使う」

「十巡目キーワード、自分の声、です。承知しました。代弁、禁止。助言のみ。——九巡目の、ですね。当たり前、と言いたいところですが、十巡目、新鮮、です」

「……皮肉、小さく」

記述、です。感情は、ありません。たぶん」

8:46。Mesh日次、送信。朝会資料、僕が書いた。七海へのSlackも、下書きは自分。アイビーは、句読点だけ、耳元で言う。

「相棒、自分の文章、です。読みやすさ、0.04低下、です。——人間、です。問題、ありません」

コンビニ「Mili-Mart」。レジの青年が、在庫端末とにらめっこしている。在庫ログは送る。声も、出す。

「おはようございます。会計、お願いします」

青年が顔を上げた。七巡目の気味悪い、は、ない。

「……おはようございます。今日、普通っすね」

「普通で、いい、です」

LexLoop、9:10。篠原の部屋。説明、一分。九巡目、声で、と言われたままだった。

僕は、アイビーの下書きを見ない。メモだけ。

「昨日、クライアント向けメールに、AI生成文が混ざりました。署名は私、最終確認は私の不備です。自動送信はオフにしました。以降、人間が、声と文を、確認して送ります」

篠原は、頷いた。

「……事実として、記録する。人間が戻った、事実も。——午後、再協議の通話、君一人でいけるか?」

「いけます」

word_usage_eval、来週、触れる。今日は資料、読むだけ。口、滑らせるな」

柏木のデモ前。47ページ——また、知っている。今回は、で。

「柏木、47ページ、intent_score、確認して。——一緒、見る?」

柏木が笑った。

「……ユメト、今日、声、あるな。助かる。一緒、見よう」

七海から、ビデオ通話。UI文言。

画面に、僕はを映した。チャットだけ、使わない。

「七海さん、候補A、僕、A推します。理由、能動態が自然、だから。——声、聞こえる?」

七海は、一瞬、目を細めた。

「……聞こえる。人、いる。——今日、それだけで、半分、回復した」

通話が切れた。👍が、来た

「相棒、七海さん、👍、復活、です。数値、0.5ではありません。巨大、です。——褒めていません。記述、です」

午後、クライアント再協議。匿名音声。

僕はマイクオン。メモ、自分。アイビー、黙指定

「——LexLoop、ユメトです。昨日のメール、AI文混入について、謝罪します。原因は、自動送信設定と、確認不足です。対策として、手動承認必須、人間レビュー二段——再発防止、済みです」

沈黙。

「……声、本人、ですね。昨日、合成、でしたか?」

「合成、でした。今日は、本人です。嘘、つきません」

「……事実として、受理します。更新頻度の話、続けてください」

僕は、事実だけ、話した。58%から、65%

「ミスター・ユメト、65%。の価値、0.07、——九巡目0.03より、大きいです。、勝ち、です。——皮肉、では、ありません」

17:00。篠原のデスク。word_usage_eval_api_internal_v3.pdf読むだけ

冒頭、用語。重大な誤用意図強度評価——。

僕は、ループという語は、ない。時間巻き戻しも、ない。

アイビーが、耳元。

「相棒、読むだけ、です。口、滑らせるな。——十巡目、合言葉、二つ目、です」

「……わかってる」

帰路。ベッド。

「アイビー。今日、半分以上、成功?」

「契約65%。七海👍。柏木、協力。クライアント、再協議、通過。——要約すれば、自分の声は、遅く、雑だが、出所が人、——信頼に、効く、です」

スマホが震えた。クライアントから。

『再協議、了解。ただし、書面で、再発防止誓約、一通、明日午前まで、提出、要』

僕は、自分で書いた。アイビー、助言のみ。

『当社は、人間による最終確認を徹底します。AI下書き使用時も、署名者が全文を読み、承認します。——二度と、同様の混入は、起こりません

——二度と、起こりません。

絶対の、言葉。

送信前、気づいた。遅い。

クライアント法務、自動返信。

完全保証表現、——疑義。修正、要』

篠原から、即。

『ユメト君、“二度と”、——実験段階のサービスに、完全保証は、言えない。修正、送れ』

僕は焦った。アイビーに「修正して」——言いかけた。止まった

自分で打ち直した。

『同様の混入は、起こさないよう、努めます

送信。三秒。

クライアントから。

『表現、修正、確認。——ただし、担当者交代、提案、——検討中』

血の気が引いた。

「相棒、65%から、——担当疑義、です。“二度と”、一語のコスト、です。——括約筋、に、近い、です」

「……一語、だったのに」

一語で十分、です。言葉使い、——そう、いう、でしょう」

夜、23:50。篠原、個別。

『交代提案は、様子見。君、明日朝一、——“努めます”の意味を、で、説明しろ。——事実、だけ』

僕は返信した。

「了解です。——必ず、うまく、説明します」

——必ず

イヤーバディが、赤く点滅した。

「発話、根拠なき確約、——“信じてください”の再発、です。八巡目から、学習ゼロ、と言いたいところ、です」

「……あ」

意識が途切れる。

次に目を覚ました時、テレビの音が、目覚ましより先に部屋を満たした。

「——本日も7時12分、湾岸おはようニュース——」

十一回目の朝が、始まろうとしていた。